目標から計画する、デザイン思考で広がる世界<後編>

〜 thincな人・GOOD GROW 亀井さん ✕ 鳥取県 米子市 〜

フリーランスのデザイナーから会社を設立し、米子の商店街の活性化に奮闘している株式会社GOOD GROW(以下GOOD GROW) 代表の亀井 智子(かめい ともこ)さん。地域イベントの企画・運営や、講演会での講師、地元商店街の理事も勤めながらカフェの運営と、デザイナーの枠にとどまらない様々な活動を行っています。デザインと経営は、どうやら近い関係にあるようです。

〜前編はこちら〜

集客できる店舗を持つこと。

Q. 地域イベントを企画・運営しているそうですが、どのようなイベントですか?

GOOD GROWで、デザインとともに取り組んできたのが地域イベントです。地元生産者のこだわりの逸品が集合する「サンロードマーケット」や他の組織と協力して行うイベントなどを手がけてきました。最近では平成に幕を閉じた地元の風物詩「土曜夜市」を復活させました。土曜夜市は全国に先駆けて米子で始まった、地域の象徴的なイベントの一つです。イベントの広報にSNSを活用し、ターゲット層に伝わりやすいデザインや文面を考えたり、チラシデザインにもこだわり、自分達の事業の根幹でもあるデザインの効果を最大限発揮できるよう、またどういったイベントならターゲット層に喜んでもらえるか、ここでもデザイン思考を意識して行っていっています。実は私、地元の商店街の理事もしています。夜市復活の際には、共感した大勢の方の協力もいただき、多世代の人が集う場所を作りだすことができました。私は商店街が「目的地」となる場所に成長させていきたいと考えています。こうした活動が様々なメディアに取り上げられ、講演させていただく機会も増えました。家族にはあまり表に出ないでと言われていますが(笑)。

Q. カフェ事業にも進出されていますが、どんな考えがあるのでしょうか?

カフェをつくったのは、商店街の活性化が目的です。地域活動に継続的に取り組んでいくには人が集まる店舗が必要だと思っていて。そんな時に空き店舗やカフェを運営できそうなメンバーとの縁があり、明確な目標になりました。2022年にレトロな町屋カフェ「Goods & Cafe みっくすカフェ」をオープン。手作りミックスジュースやスイーツ、軽食などを提供しています。活性化のみならず、カフェやプロダクトで、実際に効果が上がるデザインをクライアントさんや地域に示せることはデザイナーとしても価値になり、やりがいがあります。高校生がカフェに遊びにきて、イベントの企画を相談してくれたり、人が集まる場があることも大きなメリットです。

デザイナーでもあり、カフェの経営者でもある亀井さん。その両者には共通する部分があるようです。

Q. 経営者としてデザイナーで良かったと思うことはありますか?

デザイナーは最強だと思っていて、飲食店をやっていますが、メニューや広告物なども自分で作れますし、どこに行っても働き口がある。どんなことがあっても生きていけるという自信になっています。経営者としてデザインの実務からは離れつつありますが、「どう見せていくか、伝えていくか」ということもデザインの一部。ターゲットを設計し、目標を立てて、優先順位を付けて、余計なものを省き、プロトタイプとして実践するという、デザイン思考が経営の軸になっています。デザインをいかに地域と結びつけて課題を解決していくのか、経営と合わせてその部分も更にチャレンジしていきたいです。将来的には駄菓子屋のおばあちゃんになっていたいです。40年後には「昔は〜」なんていっているかも(笑)。ただ、見守るには自分の立ち位置が整っていないといけないし、そこを目指したいと思っています。




Q. 亀井さんにとって、デザインで広がる世界とは?

デザインって、色をつけたり、綺麗に見せたりすることだけじゃなくて、目標を達成するために設計していくものだと思います。その目標に「自分らしさを取り込んで」どううまく近づけるかも技術だったりすると思うんです。それと同じで、何をするにでも、自分自身と向き合い、目標を明確にして計画することが大事なんだとデザインを学んでわかっていきました。人とは比べず、自分のペースで。ひとつのことに集中して、迷ったり、辛い時期ももちろんありますが、まずは自分が納得するまで継続することが重要だと思います。そうすれば、いつの間にか、仲間ができてどんどん世界が広がっていくと思います。

ー おわりに ー


成功する人は、フレームワークを持っている。デザインでも普段の仕事でも大きくは変わらないのかもしれません。常に目標を掲げて、優先順位を決め、そこに向かって集中すること。そうした思考が世界をどんどん広げ、地元のまちづくりで注目を集めている亀井さん。デザインの現場で培った思考プロセスが事業にも役立っているようです。どんなことにも一生懸命取り組むことで、世界が変わっていく様子に私たちも気づきをもらうことができました。

PROFILE

亀井 智子(かめい ともこ)

株式会社GOOD GROW 代表

フリーランスデザイナーを経て、会社を設立し鳥取県米子市でWEBデザイン・広告・動画制作やSNSの運用サポートなどを行っている。デザイン思考を取り入れた商店街活性化への取り組みや地域イベントの企画・運営などを通してまちづくり事業も展開中。2022年4月には市や鳥取銀行、米子信用金庫が設立したまちづくりファンドの活用の第一号として、「Goods&Cafe みっくす」をオープン。

Goods&Cafe みっくす:
https://www.instagram.com/goods_cafe_mix/

この記事をシェアする