レゲエで未来の種を蒔く
<音楽と地元を背負う>
〜thinc なひと・レゲエアーティスト RUEEDさん×神奈川県横須賀市〜
15歳でマイクを握り、2023年にはキャリア20周年を迎えたレゲエディージェイ(Deejay)、RUEED(ルイード)さん。2019年に自身のレーベルを立ち上げ、活動20周年という節目の年から、地元である神奈川県横須賀市でレゲエの野外フェス『Yokosuka Reggae Bash(横須賀レゲエバッシュ)』の企画開催をはじめました。地元横須賀、そしてYokosuka Reggae Bashへの想いについて伺いました。
地元への想いがフェスに
横須賀の人って、横須賀愛がすごく強いんですよ。僕は19歳で東京に出てきたのですが、それは横須賀より東京が好きだからとか、横須賀を捨てたとかいうわけではまったくなくて。今の自分が果たすべき役割を考えて飛び出し、全国で活動していました。
全国で活動するうちに、地元の大切さにあらためて目を向けるようになりました。仕事で訪れた各地には、その地域をレペゼン(代表)し、盛り上げようとしている人たちがいる。そうした人たちを見て、「かっこいいな」と思ったんです。同時に、今の自分には地元を盛り上げる活動はあまりできていないなとも感じました。20代の頃は、たまに横須賀での仕事が入ると、戻ってライブしていましたが、それぐらいで。
「横須賀で大したことができていないな」ということを、20周年を機にあらためて思い返したのです。都会できらびやかな活動をしているだけが自分の表現ではないなと。地元・横須賀を盛り上げるためにできることが他にもあるはずだと考えました。
でも、1年目は半信半疑でしたよ。チームがあったわけでもなく、身近なメンバーへの「こんなことがやりたいんだ」という相談からはじまりました。ありがたいことに、声をかけた人はみんな二つ返事で「RUEEDがやりたいならやろう」と応えてくれたのです。仲間が徐々に増えていったことがものすごく後押しになって、Yokosuka Reggae Bashの実現につながっていきました。

「未来への種蒔き」に懸ける想いが
支えてくれる仲間を呼んだ
Yokosuka Reggae Bashのコンセプトは「未来への種蒔き」。かつて横須賀が僕に種を蒔いてくれたからこそ、今の僕があります。だからこそ、今度は蒔く側になりたいというのが、コンセプトに込めた想いです。目的は、レゲエという音楽カルチャーをもう1度広め直すこと。そして、横須賀を盛り上げること。横須賀を盛り上げたいと思っているのは僕だけではありません。横須賀や三浦半島の経営者たちも同様の想いを抱いており、彼らの意思とシンクロできたことが、Yokosuka Reggae Bashの実行を加速させました。
初年度は構想から開催までわずか3ヶ月という、今振り返ってもかなりの突貫開催でした。行政の方やスポンサーをお願いしに行った企業の方から、企画への反対はされなかったです。ですが、6月の後半に相談をしたものですから「えっ、9月に開催!?間に合うの?」と準備期間の短さを心配されましたね。正直なところ、1年目の記憶は必死過ぎてあまりないんです。とにかく情熱150%で話をしまくっていました。
死ぬ気でやるって、こういうことだなと思いましたね。もし失敗したら、僕のキャリアはどうなるんだろうという想いがちらつきながら、「命賭けでやってきた音楽人生、こういうタイミングも絶対ある」と奮い立たせていました。地元企業の方には、僕の熱弁ぶりに「政治家みたいな話をしているね」と言われたこともあります。20代に過ごした音楽人生では出会わなかったような方々と、今ではマチづくりの話をしている。自分としては予想外でしたが、本当に素敵な経験をさせてもらっていると感じます。

ただ、やっぱりひとりでは成し得なかったです。「レゲエのことはあまりわからないけれど、未来への種蒔きっていいじゃん」「横須賀を盛り上げたいと思っていたけど、何をしたらいいのかわからなかった。こういう機会ができてうれしいよ」など、心強い言葉をたくさんいただきました。こうして支えてくれる多くの仲間がいたからこそ、1年目から走り切れたのだと思っています。
出演アーティストへの依頼も、とにかく熱意でしたね。1年目は自分のキャリアでつながってきた方を中心に、「この人に出てほしい」と思った人に声をかけていきました。こちらもありがたいことに、みんな快諾してくれました。真面目に音楽人生を歩んできて良かったなと強く感じましたね。出てほしいアーティストは全国にまだまだいます。彼らに出たいと思ってもらえるよう、これからも良いステージを用意し続けたいです。
Yokosuka Reggae Bashは、1年目から万単位の来場者が来るという大成功を収めました。「まずは種蒔きだ」ということで入場無料にしたところ、老若男女問わず、多くの方に来ていただけたのです。レゲエに馴染みがない方も、無料であれば地元の祭り感覚で足を運んでくれるのではと思っての判断でしたが、これが正解でしたね。「レゲエっていいですね」「このアーティストがかっこいいと思いました」とレゲエにはじめて触れた方に言ってもらえたことは新鮮でうれしかったです。そして、中学生から「いつか出演できるように、歌を歌いはじめます」という感想もいただけて、さっそく未来への種を蒔けたなという実感も持てました。

Yokosuka Reggae Bashは、これまでに3回開催していて、第4回の開催もすでに決まっています。当初は1回目だけ無料にするつもりだったのですが、2回目、3回目もクラウドファンディングで支援金を募りながら無料開催を継続。無料開催への賛否や心配の声もあるのですが、「どこまで無料でできるか」に挑戦している感じですね。
個人的にも挑戦したいのです。無料だからこそ、単なる野外音楽フェスではない場、空気が醸成できていると感じているんですよね。3世代にわたる人たちが集う、愛があふれるフェスがつくれているので、このプライスレスな空間をあたためて育てていきたいなと。そのために絶対にぶらしてはいけないのが、「横須賀を盛り上げるんだ」という軸です。ここが揺らいでしまうと、野外音楽フェスのひとつになってしまうでしょう。そうではなく、Yokosuka Reggae Bashは参加者も含め、みんなで「1本の樹」を育てていく感覚で発展させていきたいです。
1990年代のはじめ、横須賀では伝統的なレゲエイベント「REGGAE JAPAN SPLASH(レゲエ・ジャパンスプラッシュ)」が開催されていました。当時のことを覚えている人は今もいて、横須賀とレゲエフェスとの親和性の高さを感じます。すでにレゲエの種は植わっているんです。僕はその種を育てていきたいですね。さらに横須賀は第7艦隊音楽隊が活動している地域でもあります。そこに関わる人たちもYokosuka Reggae Bashに巻き込めたら「スカっぽさ(アメリカ文化と日本文化とが混じり合った横須賀特有の雰囲気)」が出せるかも、と構想しています。
また、Yokosuka Reggae Bashに付随する活動も行っています。地元の学校に講演に行ったり、養護学校でアコースティックライブやトークをしに行ったり。多感な10代の子たちに直接語り掛けられる機会はなかなかないので、すごく新鮮ですね。Yokosuka Reggae Bashがただの音楽フェスなら、こうした地元と連携した取り組みにはなかなかつながらなかったと思います。深夜2時半にライブをしていた人間が、朝10時に子どもたちに向かって話しているなんて想像もしなかった未来ですが、貴重な機会をいただけて本当にありがたいなと思っています。
来場者と共に、スポンサーも年々増えています。協賛してくださった企業が、別の企業をご紹介してくださることも多くて。最小限のチームではじめた第1回目から、想いに賛同し、一緒に歩いてくれる仲間がどんどん増えていることがすごく嬉しいですし救われていますね。こうした広がりも、種を蒔いている実感につながっています。

これからも種を蒔き続ける
Yokosuka Reggae Bashを継続し、横須賀にレゲエが浸透してくれたらうれしいです。Yokosuka Reggae Bashには、愛でつながっている空気感があると感じています。そんなマインドセットがもっと横須賀に浸透し、さらなる盛り上がりを生むきっかけになったらいいなと。そして、県外から横須賀を訪れる人が増えるというサイクルを作り出せればいいなとも思いますね。さらに、レゲエを通じて、出会ったことがない人も救えたら最高です。ぜひ一度、Yokosuka Reggae Bashに遊びに来てほしいです。
20周年という節目に何かをしたいという想いと、いつか地元・横須賀に貢献したいという想いが重なり、レゲエフェスの開催につながりました。多くのレゲエアーティストに集まってもらう場をつくれたことは、自分自身にとっても非常に大きな意味があることだと思っています。多くの来場者や関係者から笑顔で「最高でした」という言葉をかけていただき、反響の大きさを肌で感じました。同時に「継続していかなければ」と強く思いました。今ここで踏ん張っていいものを作り上げていくことが、この先の10年20年を大きく変えるはずです。こうした覚悟が、結果として「レゲエを背負う」という今の感覚につながっています。自ら「レゲエを背負ってやる」と言うタイプではないのですが、実質的に背負ったなという自負はありますね。

Yokosuka Reggae Bashが長く続いて、いつか僕から別の人へとバトンを渡すときがくるかもしれません。その日が来るぐらいのイベントに育てたいですし、いつか手を離れるときがきても、「Yokosuka Reggae Bashらしさ」が永劫続いてほしいですね。
今は世の中が本当に目まぐるしく変わり、レゲエが持っているメッセージ性がすごく響く時代だなと感じます。それは多くの問題があったり、提案が必要とされていたりする時代でもあると捉えることもできる。こうした時代であることを素直に喜んでいいのだろうかという想いもあるのが本音です。
ただ、レゲエは歌詞の力が強い音楽で、「何か」を伝えるパワーがあります。人を直接的に変えることはできなくても、メッセージを受け取った人の心で芽吹く可能性がある。そんな可能性の種を蒔き続けたいと思います。その種が今の時代を生きていくための糧や指針になったり、道を照らす光になったりすることを信じて、これからもクリエイティブ活動、レゲエを続けていきます。

ー おわりに ー
右も左もわからない状態から、見事1回目の開催を成功させたRUEEDさん。本人の熱い想いに感化された人が多かったことはもちろん、ご本人がおっしゃるように、これまでの音楽活動を見ていてくれたアーティストたちが多かったことも、素晴らしいフェスにつながったのでしょう。自分を見つめ、芯をぶらさず活動を続ける姿は、きっと誰かが見ている。そんなことを感じたインタビューでした。
PROFILE
RUEED(ルイード)
Mastermind CEO・レゲエディージェイ(Deejay)
1988年、神奈川県横須賀市出身。レゲエディージェイ(Deejay)であり、MastermindのCEO。15歳でキャリアを始動し、2007年には「Road to 横浜レゲエ祭」にて史上最年少の18歳で優勝を果たす。デビュー作『NEW FOUNDATION』以降、数多の作品を世に送り出し、シーンの一線を走る最重要アーティストとしての地位を揺るぎないものとした。
2018年に独立し、新レーベル「Mastermind」を設立。2020年にリリースしたアルバム『Q』、続く『K』は共にiTunesレゲエチャート1位を記録するなど、コロナ禍においてもオンラインライブや全国ツアーを成功させた。
B.League公式テーマソングへの客演や、2年連続の「New Year Rock Festival」出演、俳優業など、ジャンルを超越し活動。激動の時代の中、唯一無二の世界観とメッセージでリスナーを魅了し続けている。
RUEED OFFICIAL WEB SITE:https://rueed.jp/
Yokosuka Reggae Bash: yokosukareggaebash.com




