VTuberの力で実体経済を動かす、独自のビジネス論

〜thinc なこと・VTuber事業プロデュース✕ 全国各地の魅力〜

VTuberが誕生してから約10年。現在、VTuber市場は1,000億円規模を突破し、今もなお成長を続けています。かつてはスーパーチャット(投げ銭)や動画再生数が収益の主軸でしたが、現在ではグッズ販売(MD)、企業タイアップ、実体経済との接続など、マネタイズ手法は劇的に多角化しました。

VTuber業界の変化について、株式会社uyet(ゆえっと)の代表プロデューサーとして、VTuber事業を手掛ける金井洸樹(かないこうき)さんは、「アニメ、ゲーム、ライブ配信、アイドル、ネットカルチャーなど、多種多様な業界のマネタイズ手法がキメラ的に融合した結果」と分析します。さらに、eスポーツ業界におけるスポンサー収入のように、他業界で成功しているモデルでVTuber業界に未実装の領域はまだまだ存在しており、市場の伸びしろは未知数です。

大手プロダクションが自社所属タレントの育成や専属マネジメント(垂直統合)でスケールを狙う中、同社は「自社タレントを持たない」という独自の立ち位置を貫いています。黎明期から業界を知る金井さんが感じるVTuber業界の今と未来、そこで歩む独自のビジネス戦略について伺いました。

目次
  1. 01 独自のポジショニングと共存共栄の関係性
  2. 02 過渡期を迎えたVTuber市場と持続可能性を支えるインフラ
  3. 03 最初のひと漕ぎからつくるエンタメと社会の未来

Profile

金井洸樹かないこうき

株式会社uyet 代表プロデューサー

独自のポジショニングと
共存共栄の関係性

あえて自社タレントを抱えない

エンタメ業界において、自社で事務所機能を持ち、タレントを育成・マネジメントすることは王道のビジネスモデルです。しかし、当社は設立当初から、自社でタレントを抱え、育成やマネジメントをするといった事業は行っていません。やるつもりも一切ありませんでした。

前職で育成・マネジメント業に携わっている方々に堂々と顔向けできるような事業をしたいという個人的な理由もありましたが、一番の理由は、私たちのようにクライアントと向き合い、企画を練る会社にとって、自社タレントを抱えるのはノイズになると考えているからです。

もし自社に所属VTuberがいれば、どうしてもまずは「自社のタレントの中から起用できないか」と優先して考えてしまうのが人情ですし、事務所機能を持つ会社としては当然の判断でしょう。しかし、地域の課題に向き合う事業社として考えると、そうした自社都合の姿勢はクライアントに対して非誠実なのではないかと思ったのです。

だからこそ、「自社タレント」というフィルターを排除し、その企画に最も適したVTuberをフラットに選定したい。そのためには、自社にVTuberを所属させる必要がそもそもありませんでした。

日常的に多角的な業界企業と情報交換をし、VTuberの動向や活躍をチェックし続けている当社は、各事務所や個人勢VTuberにとっても、「案件を奪い合う競合」ではありません。「新しい仕事と経済圏をもたらしてくれるパートナー」としてポジショニングできているからこそ、業界全体に価値が巡る好循環が生まれているのです。

株式会社uyet 金井洸樹さんのthinc Journalでのインタビュー風景
(Photo:Yusuke Ishizu)

地域との取り組みは
家族に話せる仕事になる

前編では、「施策が終わったあともふと思い出してしまう企画」の大切さをお話しましたが、私は、この「誰かに話したくなる」という感情をなにより重要視しています。

VTuber本人が心からファンやリスナーに勧めたいと思える企画になっているか、という点はもちろんですが、実はもうひとつ、個人的な想いがあります。私自身、VTuber業界で働きはじめてからの約3年半、インターネットに全く詳しくない両親に、自分の詳しい仕事内容について話したことがなかったのです。だからこそVTuberが自分の回りや家族に「自分の仕事」を話しやすくなる環境をつくりたいと考えていました。

当社が最初にはじめた「バーチャル物産展」もまさにその想いが根底にあります。オンライン上でVTuberたちが、特産品を食レポしながら販売するこの企画は、VTuberが周囲に自信を持って語れる仕事のきっかけとして形にしたものでした。活動について詳しいことまで話さなくとも、「地域の特産物をPRする仕事をしているんだ」と言えるようになればいい。「話さない」のと「話せない」のとでは意味が全く違います。実際に参加したVTuberから「家族に応援してもらえるようになった」という変化のお声も届いています。

(提供:株式会社uyet)

過渡期を迎えたVTuber市場と
持続可能性を支えるインフラ

変化するVTuber業界の過渡期

業界が急成長を遂げた現在、VTuber業界は一種の「過渡期」にあると感じています。ただし、過渡期といってもネガティブなものではありません。昔と比べ、アニメやゲームの人口が増え、キャラクターを受け入れられる土壌は確実に広がっています。ライブ配信や動画プラットフォームの視聴時間も伸び続けており、市場の基礎体力はとても高いです。そのうえで、事務所やVTuberがどう生き残っていくのかの最適化が進むフェーズに入ったのだと捉えています。

個人的には、10年前のYouTuberの状況と似たものを感じます。初期のYouTuberはエンタメ系でバラエティ要素の強い企画が中心でしたが、時を経てジャンルが細分化し、今では企業チャンネル、政治家のチャンネル、経済系チャンネル、Vlogだけのチャンネルと、本当に多様化しましたよね。VTuberも同じ変化を辿って当然だと思っていますし、そうした変化とうまく付き合っていきたいと考えています。

株式会社uyet 金井洸樹さんのthinc Journalでのインタビュー風景
(Photo:Yusuke Ishizu)

配信者に特化した
メンタルヘルス支援

選択肢が広がり、活動スタイルが多様化していくなかで、当社は配信者が安心して活動を続けられる環境づくりにも注力しています。そのひとつが、VTuberやVライバーに特化したオンラインメンタルヘルス支援サービス『haicoオンラインクリニック』です。

私としては、VTuberの方たちにはやっぱり長く楽しく活動してほしいですから、何かあったときにラフに相談できる場所をつくりたいなと思ったのです。VTuberを含む配信者は珍しい存在ではなくなりましたが、やはり特殊な立場だと思うんですよね。自分のリアルタイムな言動が不特定多数にさらされ、何を言われるかわからない環境は、精神衛生上決して良いものとは言えません。最近では、会社員や学生をやりながら活動している方も多く、気付かないうちに体調やメンタルを崩してしまうケースも増えています。

一般のクリニックでは「VTuber特有の悩み」を説明するコストがかかりますが、業界を理解している専門家に相談できる場があること自体が、配信者の大きな安心感に繋がります。自己管理で片付けるのではなく、業界の下支えとなるインフラを構築したいとサービスをつくったのです。

反響は良く、「こうした場があるだけでもありがたい」と言っていただけています。自治体や企業が、業界の課題に対してもきちんと向き合っている企業なのだなと思ってくださったら嬉しいですね。VTuber業界が伸びてくれればくれるほど、自分たちの会社も成長するわけですから、みんなで仲良くしたいし、みんなで伸びていきたい。ただ、そうした想いは口で言うだけならどうとでもなります。だからこそ、行動で示す必要があったのです。実は、このように「リスクを負ってでも自分たちの行動で道を切り拓く」という姿勢は、当社の創業初期から一貫しているスタンスでもあります。

(提供:株式会社uyet)

最初のひと漕ぎからつくる
エンタメと社会の未来

前例のない領域へ

行政や大手企業との取り組みをスタートさせる際、最大の障壁となるのが「実績(前例)がないこと」です。行政は前例がないと予算化しづらく、事務所やタレント側も成果のわからない案件を安易には受けられません。このデッドロックを打破するため、当社は創業初期、自腹を切って前例を作り出しました。

最初は実績もない状態から、全国各地の自治体や企業へ泥臭く問い合わせを続ける日々でした。「なんかよくわからないけど、がんばっているようだから一度話を聞いてみましょう」と言ってくださったところに私や社員が出向き、説明を重ねていったのです。そして、最初の事例は、当社が費用を負担して着手し、「実際にやってみたら、これだけの結果が出ました」と目に見える実績としてお見せしました。

自転車のタイヤは、最初のひと漕ぎがなければ回りはじめませんが、その最初のひと漕ぎはなかなか誰も手を付けないものです。行政はもちろん、事務所も個人タレントも仕事になるのかわからないものを安易に受けることは難しいですから。しかし、誰かがその最初のひと漕ぎを引き受けなければ、いつまで経ってもサイクルは完成せず、回りはじめることはないのです。私たちがリスクを負って結果を示してみせたからこその今があると思っています。

株式会社uyet 金井洸樹さんのthinc Journalでのインタビュー風景
(Photo:Yusuke Ishizu)

未エンタメ化領域へサイクルを広げ
自分の「好き」を社会へ出力する

VTuber業界は、今後ももっと伸びると思っています。もう頭打ちだと言っている方がいたら、それは可能性を見出せていないだけでしょう。「伸びる」は各コミュニティが拡大するというわけではありません。ここ2、3年は特に、大きくなることがイコール幸せではないと思っているのです。現代は、ネット、リアル問わずマイクロコミュニティが増えており、VTuberも個人の自己表現や居場所の選択肢のひとつとして日常に溶け込んでいる感じなのかなと。VTuberという活動の場があるからこそ、今までチャレンジできなかったことに挑めるようになるかもしれませんし、やりたかったけれど表現できなかったことを表現できるようになるかもしれません。そうした形で、いろいろな人の生活に馴染んでいったらいいなと思っています。

そして、事業者としては、まだ十分にエンタメ化されていない領域である、第一産業や第二次産業などへも踏み出し、お金・人・もの・情報の流れをつくりたいと思っています。他の業界企業がこちらの業界に少しでも関わりたいと思ってもらえるようなことをしたり、逆にこちら側から足を踏み出してみたりしながら、今までサイクルがなかったところにサイクルを作り、その渦を大きくしていく役割をうまく担っていきたいです。

VTuberやエンタメに関心のない方にも、ぜひこの記事が届くといいなと思っています。他の産業の人からすると、エンタメやVTuberは「わかりやすい俗なもの」だろうと思っているのですが、では今回私が話した内容は俗だったのか?という視点で見てもらえたら嬉しいですね。

私たちは、いいものを作っている人たちに対して、「自信持って『いいものです!』と世の中に広める手伝い」をしたいだけです。知られていない前提に立ち、興味がない人にも伝わる形で自分の「好き」を社会へ出力できる人が増えていくこと。VTuberやエンタメに縁遠い人にも知ってもらえたらいいなと思っています。それこそが、エンタメの力で社会に貢献していく私たちの目指す未来です。

株式会社uyet 金井洸樹さんのthinc Journalでのインタビュー風景
(Photo:Yusuke Ishizu)

ー おわりに ー

VTuberがビジネスになるのかどうかわからなかった黎明期から、世間に認知され巨大市場となった今も、変わらず「サイクルの一手目」をつくるべく挑戦を続ける金井さん。VTuberを本業としている人だけではなく、「会社員や学生をしながらVTuberでしか出せない自己表現をしている人」へのあたたかな目線、「もっと布教が上手い人が増えてほしい」といったお話から、個人が「好き」や自分の知識を発信することへの強い想いを感じました。何かを表現する、発信することが誰にでもできる時代だからこそ、あらゆる人に学びのあるお話だったのではないでしょうか。

この記事をシェアする

thinc について

クリエイティブに考える人のためのプラットフォーム「thinc」

「クリエイターが輝ける社会を創造する」という当社のミッションを実現するために、「Think Creative」=「クリエイティブに考えよう」という意味を込めた「thinc(シンク)」というプラットフォームを展開しています。
クリエイターが自らの能力・スキルを武器にいつでも、どこでも働くことができる「thinc Workplace」。全国各地のクリエイターにスポットライトをあて、新たな才能の発掘とキャリア形成を支援する「thinc Growth」。そしてクリエイターがより生産的な業務に専念することを可能にする「thinc Project」。
この3つの領域において、さまざまなサービスを展開してまいります。

View More

運営会社

クリエイターと、未来を変える

私たちは多くのパートナークリエイターと協力し、
クリエイティブで企業や社会の課題解決を行うためのプラットフォームをつくる会社です。

View More