琉球イラストレーションを通して届けたい想い
<アーティストの原点>

〜 thincな人・琉球イラストレーション 与儀さん ✕ 沖縄県 〜

地域とアートを融合させる[琉球イラストレーション] 与儀 勝之(よぎ まさゆき)さん。那覇市に生まれ、東京で広告代理店のグラフィックデザイナーとして勤務した後、沖縄へ帰郷。その際、沖縄の豊かな自然と生命力、そして伝統文化に再び感動を覚え、創作の扉が開かれました。2017年には沖縄市内に“ art gallery soranoe(ソラノエ) ”を開廊し、自身の作品発表の場としてのみならず、地元のアートシーンを盛り上げるために他のアーティストにも提供を行っています(※2023年12月現在休止中)。


アートの世界に興味を持ったきっかけ

 

現在はアーティスト活動をしていますが、初めからアーティストを目指していた訳ではなかったんです。辿っていくと、幼少期からとにかく描いたり作ったりすることが本当に好きでした。授業の話も全く聞かずに、ノートや教科書の端っこにひたすら落書きをしていたら授業が終わってしまうこともありました。ファミコン世代のため、ゲームで遊んでいるうちに、自分でも作ってみたいと思うようになり、ノートに企画や構成を考えたり、キャラクターなどを描いたりしました。とにかく何か作りたいと思っていて、そういうところが一番の原点で、今でも変わっていないところだと感じています。

中学校・高校時代に進路を考えていく際には、広告やグラフィックデザインみたいなことがやりたいと思っていました。かっこいいビジュアルにかっこいいコピーが載っているデザインに憧れて、そういうことをやりたいなと。沖縄県立芸術大学を卒業しているのですが、アーティストになりたくて美術系の大学に行ったという訳ではなく、グラフィックデザイナーになりたくて入学したんです。入学したのは良いものの、広告業界のことは分かっていませんでした。当時の沖縄はインターネットが(ほとんど)ない時代で、情報量が少なかったので、広告業界に入ればグラフィックデザインができるだろうくらいに思っていたんです。

沖縄県立芸術大学で学ぶ中、琉球の歴史や文化に触れ、沖縄にちなんだ作品を制作する経験が与儀さんに大きな影響を与えました。これまで知らなかった沖縄の歴史や文化に感銘を受け、最終的には沖縄の役に立てるような人になりたいという想いが芽生えたそうです。

業界のことが分かってから考えると、私が本当に望んでいたのはデザイン事務所だったんです。ただ当時は広告代理店とデザイン事務所の関係が分かっていなかったので、とりあえず広告業界に入れば、作りたいものが作れると思っていました。“ディレクション”ということさえも知らなかったのですが、やってみたらそれはそれで楽しかったです。誰かが作ったものがどのように仕上がっていくのかを見ているのも楽しいものでした。でも、それが私の中でモヤモヤを生み、アーティストとしての始まりになりました。

自分の好きなものを作れていないというモヤモヤが溜まっていった頃、仕事が早く終わった日などに落書きみたいなことを始めました。描いたものをスキャナーで取り込んで、Photoshopで編集して。それは、息抜きとしての制作だったので外に発表することは全く考えていませんでした。息抜きで始めたのが一番のスタートです。今とはスタイルも何もかも違いますが、とにかく作りたい、手を動かしたい、何かを生み出したいという想いがありました。


(Photo : Kohei Kawabata)

創作の原点は“ 沖縄の宝 ”

こんなことが何年か続いた後、沖縄に戻ってきました。沖縄に戻ると、空、海、日差し、植物、そういったものが東京とは見え方が違います。そこが沖縄のひとつの宝だよな、と思いました。驚きすぎて放心するようなことがあると「マブイ(※魂)落としたんじゃない?」のような感じで、そういうことを日常的に言ってしまうところがすごく良いなと。ご先祖様に対する想いとか、精霊とか、目に見えないものを大切にする心は謙虚さを生むじゃないですか。そういったところが僕の中に一気に入ってきた時期があって。それでこれは形にしておきたい、自分の中で表現したい、と思ってスタイルが変わり始めました。なんとなくではなく、道筋が見えてきて、それが今のスタイルにつながっていくんです。

沖縄の魅力からインスピレーションを受けて

与儀さんの作品は、まるで沖縄の風景や文化をそのままキャンバスに映し出しているようで、地域の魅力を十分すぎるほどに感じさせてくれます。幼少期から何かを作ることが好きだったことや、大学時代に琉球の歴史や文化を学んだことで、いつかは沖縄の役に立てる人になりたいという想い。そして、東京で就職したからこそ、沖縄の魅力を再認識したことが原点となり、アートに込める情熱が生まれたと言います。育った環境や地域が、知らず知らずのうちに、“ 琉球イラストレーション 与儀勝之 ”をつくっているのだと感じました。

次回、『アーティストへのターニングポイント』では、デザイナーからアーティストへ転身したきっかけや、“ art gallery soranoe(ソラノエ) ”開廊についてのお話を伺います。

 

『アーティストへのターニングポイント』はこちら

PROFILE

与儀 勝之(よぎ まさゆき)

琉球イラストレーション/art gallery soranoe(ソラノエ)ギャラリーオーナー

沖縄県那覇市生まれ、沖縄県立芸術大学卒
東京の広告代理店のグラフィックデザイナーとして6年勤務した後、沖縄へ帰郷。
沖縄で目にした自然の豊かさや生命のたくましさ、そして地に根付いた伝統文化に改めて感動し、創作活動を開始。“ 琉球イラストレーション ”と称し、伝統を次代に繋ぐ想いを込めながら制作を行う。
紅型・螺鈿細工・影絵・浮世絵・縄文土器といった古典芸術から影響を受け、古と新を繋ぐ作風を確立。また陰陽や文様といった要素を織り込むことで、アジア的宇宙観を表現することを目指している。
現在は、自身の画業の集大成に向けて、創作絵本『海の星』を制作中。

与儀勝之公式サイト https://yogima.net/
art gallery soranoe https://soranoe.jp/atelier/
グッズ通販 夏至南風  https://store.yogima.net/

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