琉球イラストレーションを通して届けたい想い 
<アーティストへのターニングポイント>

〜 thincな人・琉球イラストレーション 与儀さん ✕ 沖縄県 〜

多くの人々に愛される作品を生み出し続けている[琉球イラストレーション] 与儀 勝之(よぎ まさゆき)さん。東京の広告代理店でグラフィックデザイナーとしての経歴を持ち、その後沖縄の地でフリーランスクリエイターとして活動を始めました。そんな与儀さんに、アーティストへのターニングポイントや“art gallery soranoe(ソラノエ)”開廊について伺いました。


広告代理店からフリーランスへ

沖縄へ帰郷しましたが、その当初はフリーランスになるつもりはなかったんです。大学生の時に思い描いていたマスタープランは、卒業後に東京で修行をして、沖縄へ戻り、沖縄の広告代理店などでグラフィックデザイナーとして働くことでした。ですが実際に沖縄へ戻ってきた時には、「1年ぐらいは遊びたい!」と、遊びながら時折東京の先輩が受け持つ沖縄関係の仕事を手伝ったりして過ごしました。この生活があまりに楽しくて、これが僕の人生をちょっと壊しました(笑)。そんな生活をしている間にフリーランスとしての道筋も自然とできてしまい、そのままフリーランスになることを決めたんです。

東京での生活中にスノーボードに魅了され、29歳で沖縄へ帰郷後、福島のゲレンデバイトを始めたと言います。12月〜3月の間は山籠りの生活を楽しみ、夏は海で遊びながら自然とフリーランスとして仕事を受注するように。この生活は32歳まで続き、夏は海で、冬は雪山で遊ぶというライフスタイルが後々の創作活動に良い影響を与えていたと振り返りました。


アーティストへのターニングポイント

フリーランスの活動と同時に、現在の琉球イラストレーションにつながる活動が始まりました。知り合いから、「アートのグループ展に出してみない?」というお誘いをいただいたのです。息抜きのような創作でしたし、表に出すつもりも全くなかったので、作風はあまり定まっていませんでした。デザイン業務の息抜きでしたので、好かれるかどうかは関係なく、妥協せずに自分の好きなものを100%注ぎ込むということを最初から決めていました。私はアジアの古典芸術で、例えば、螺鈿細工だったり、バリの影絵だったり、沖縄であれば紅型と呼ばれる型の染め物だったりが好きでして。そういったものを、自分の中でモヤモヤしながら1つの世界を作りたいと思い、追求を始めました。

※参考イメージとなります。(左上:螺鈿細工 / 左下:バリの影絵 / 右:紅型の着物)

生き物の中に模様がいっぱい入っている訳のわからない絵を、誰かが好きになってくれるなんて最初は思ってもいませんでした。ですが、いざ表に出してみると意外にも評判が良かったりして。少しずつ作品を発表していくと、活動も少しずつ広がりました。

2年程かけて絵本を1冊制作したのですが、これが大きな転機となりました。ホッチキス留めの中綴じ製本という簡単なものだったのですが、勢い余って500部も刷ってしまって。500人も友達いないけどなって思いつつ(笑)、友達から「美術館や映画館のショップなどに声をかけてみたら?」と言われ、相手にしてくれないだろうと思ったのですが、意外にも置いてくださって。それがきっかけでメディアや新聞の方々に取材していただいたり、仕事が発生したりと、少しずつ動き始めました。


(Photo : Kohei Kawabata)

アーティストとしての知名度も少しずつ上がりながら、いただく仕事も少しずつ膨らみながらも、グラフィックデザインの収入の方が高く、ずっとグラフィックデザインが本業でした。

ターニングポイントとなったのは、41〜42歳の頃、デザインの仕事とアーティストについて考えたことがきっかけです。その当時もデザインの仕事の収入が7〜8割で、アーティストとしての収入が2〜3割ぐらいの感じでした。でもここから先、40歳、50歳、60歳と将来を考えた時に、自分が何をやりたいか、何が自分なのかと言ったら、アーティストの方をやりたいなと思って。自分にしか描けないものがあると思っていたので、デザインの仕事は引退しようと思ったんです。勝算もありませんでしたし、凄く冒険的な決断ではありました。妻は別の会社で働いていましたが、相談した結果、二人で二人三脚でやっていこうと、会社を辞めることにしました。

まずはギャラリーというか、事務所を探して、それがソラノエのスタートです。きっと2〜3年はご飯と梅干しみたいな生活だろうと思っていました。でも面白いことに、バスッと切って飛び込んでみると、不思議なことにそこから急成長することができました。皆に同じようにやってみなよとは言えませんが、どちらがより楽しいか、自分の人生の中でこの先やりたいことはどちらだろうと思った時に、こっち(アーティスト)だよなって。自分にしか描けないもの、作れないものがあると思ったので。

2017年に沖縄市内に自身のアトリエ兼ギャラリーとして“ art gallery soranoe (ソラノエ) ”を開廊。沖縄にはギャラリーなど作品を発表する場が少なく、与儀さん自身も個展や展覧会などをする際の場所探しに難儀をされたとのことでした。同じように場所探しに困っているアーティストの作品発表の場になればとレンタルギャラリーとしての一面を持たせ、地元のアートシーンを盛り上げています。(※2023年12月現在休止中)

自分らしい道を選んだ先に

ユニクロやオリオンビールとのコラボレーション、また全国各地で展覧会を開催するなど、今やアーティストとしての活躍が目覚ましい与儀さん。 アーティストとしての道のりは厳しいものになると予想しながらも、夫婦で思い切って飛び込んだところ、不思議なことに急成長を遂げたとお話くださいました。『人生とは面白いものです。何か一つを手放したら、それよりずっといいものがやってくるものです』という有名な言葉もありますが、まさに与儀さんの冒険的な決断が、アーティストとしての成功を掴むきっかけとなったように思います。 人生を左右するような大きな決断をすることは容易ではありませんが、自分らしく生きる道を進む与儀さんの姿は生き生きとし、力強さも感じました。

次回、『アーティストとしての歩み』では、これまでのデザイン経験が、どのようにアートに活かされているのか、お話を伺いました。

 

『アーティストとしての歩み』はこちら

PROFILE

与儀 勝之(よぎ まさゆき)

琉球イラストレーション/art gallery soranoe(ソラノエ)ギャラリーオーナー

沖縄県那覇市生まれ、沖縄県立芸術大学卒
東京の広告代理店のグラフィックデザイナーとして6年勤務した後、沖縄へ帰郷。
沖縄で目にした自然の豊かさや生命のたくましさ、そして地に根付いた伝統文化に改めて感動し、創作活動を開始。“ 琉球イラストレーション ”と称し、伝統を次代に繋ぐ想いを込めながら制作を行う。
紅型・螺鈿細工・影絵・浮世絵・縄文土器といった古典芸術から影響を受け、古と新を繋ぐ作風を確立。また陰陽や文様といった要素を織り込むことで、アジア的宇宙観を表現することを目指している。
現在は、自身の画業の集大成に向けて、創作絵本『海の星』を制作中。

与儀勝之公式サイト https://yogima.net/
art gallery soranoe https://soranoe.jp/atelier/
グッズ通販 夏至南風  https://store.yogima.net/

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