伊豆の素晴らしさを伝える、デザイン思考が持つ可能性<後編>

〜 thincな人・ジオガシ旅行団 鈴木さん ✕ 伊豆半島 〜

都内勤務からフリーランスへ転身、生まれ育った伊豆の自然の素晴らしさを伝えるべく、その景色をそのまま”お菓子”にしてしまった画期的な製品「ジオ菓子」を発明した鈴木さん。続く後編では、製品の枠を飛び出した活動=「ジオガシ旅行団」についてお話を伺いました。

〜前編はこちら〜

雄大な魅力をもつ「自然」と触れる、きっかけづくり。

Q「ジオガシ旅行団」としてはどのような活動を行っていますか?

「旅行団」という名前に由来する2つの活動を行っています。ひとつめはお客様に伊豆の自然を楽しんでいただく体感ツアーを行っています。その中では自然や地質、文化や産業、その土地の歴史についての説明だけでなく、防災についての知識の共有も行っています。

ふたつめは、伊豆にとどまらず全国に出張して各地の魅力をジオ菓子メソッドで引き出す出張ワークショップを行ったり、全国の小中高や博物館などを回って座学とジオ菓子づくりをセットにした総合教育的キッチン教室も行っています。

また現在は常葉大学でデザイン思考の講師も務めています。デザイン思考そのものを意識したのはジオガシ旅行団の活動を走らせた後に本で読んだのがきっかけだったんですが、たまたま講演を聞きに来てくださった大学関係者から「このまま大学のデザイン思考の授業ができる内容でした」と言われ、そのまま講義を持たせていただく運びとなりました。
この機会を通じてより専門的なお話を周囲の先生方から聞けるようにもなりました。



ジオ菓子は伊豆の魅力を知るコミュニケーションツール。デザイナーである鈴木さんならではの視点の地質名所の解説文とマップがセットになっており、訪れてみたくなる仕組みが盛り込まれています。背景は弁天島の斜交層理(しゃこうそうり)。ジオ菓子を片手に伊豆の名所を楽しむ。新しい体験がそこにはあります。


Q.鈴木さんがこうして幅広く活動をされている理由を教えてください。

第一には「自然に対する絶対的なリスペクトがあり、大地のようにありたい」という考え方からです。クリエイターとして、世の中の人がそれを知り、足をむけてくださるきっかけ・入口をつくりたいんです。あとは皆さん自ずと更に奥へと入り込んで行ってくれる。

ジオ菓子についても、お菓子というアイデアを選んだのはあくまでも手段でした。伊豆の自然の魅力を伝えるために最適かつ全ての要素が含まれていると考えたからなんです。嬉しい成功を通じてお菓子屋さんのイメージが先行していますが、実は自分では日々いろいろな課題を大喜利のように考えて楽しんでいる「企画屋」だと思っています。




Q.鈴木さんの考えるデザイン思考の使い方とは?

デザイン思考というと、まず「問題解決」のイメージを持たれる方が多いかと思います。もちろんその通りで、私自身も自然や地質と向き合い、各地の方々と一緒に課題感を共有しながら解決方法を探っています(編集部注:デザイン思考における洞察・共感のプロセス)。

そこから私の場合は課題となる状況の洗い出しをし、芯にある駒をあらゆる角度から探り、全部のバランスが一番よく収まるように物語を紡ぎます。そして試行錯誤を行っていく・・ということが多いです。

さらに感じるのは、デザイン思考は教育の分野においても非常に有用だということ。例えばジオガシ旅行団の教育メソッドを地学アウトリーチに活用してもらいたい、未来につなげたいといった理由で論文を書いてたりもします。教育も広告やクリエイティブと同じく「伝える」手段の一つだと思っていて、例えば授業やキッチン教室などを通じて子供たちに「大地の美しさと強さを知り、私たちとの関わりについてそれぞれ思考を巡らせて欲しい」と願っています。


ーおわりにー

原体験に基づく情熱を伴ったアイデアがアウトプットを生み出すヒントに


今回のインタビューを通じて、熱い想いをたくさん伺うことができました。自然や地質と向き合い、地域の人々や専門家の声も聞きながら問題解決のアイデアを考えていく。試作品のエピソードにもあったように、アイデアを試行錯誤しながらアウトプットに繋げていくプロセスも含めて、鈴木さんは意図せずしてデザイン思考を体現されてきたのだと感じました。そして現在は大学講師・研究者として、教育の分野にもデザイン思考のマインドセットを昇華させていらっしゃいます。

デザイン思考には、会議を経ずして「情熱を伴ったアイデア」を持った人がプロジェクトを推進していくケースもあります。しかし、同時にそのアイデアで人を動かす難しさも存在します。そのために「Prototype(試作品づくり)」と「Test(検証)」のサイクルを繰り返し、時にはアイデアや課題そのものの見直しにまで遡るというプロセスが用意されているのもデザイン思考の特徴の一つです。

情熱を伴ったアイデア。更には鈴木さんの「伊豆・地層(ジオ)の魅力に興味を持ってもらいたい・伝えたい」という思いからアウトプットが生まれ、そこから様々な活動に繋がっていった。それらのプロセスに多くの人を巻き込んでいく過程、手段として、デザイン思考が非常に有用である、ということを学べる好例ではないでしょうか。みなさんもぜひ地層の魅力を楽しんでいただければと思います。

PROFILE

鈴木 美智子(ずすき みちこ)
ジオガシ旅行団 代表
早稲田大学 人間総合研究センター 招聘研究員 / 常葉大学 造形学科 非常勤講師 / ふじのくにしずおか観光振興アドバイザー / 萩ジオパーク推進協議会アドバイザー
静岡県生まれ。多摩美術大学卒業後、東京の広告代理店でデザイナーとして活躍。2007年に南伊豆町へ移住し、2012年にジオガシ旅行団を設立。大地の成り立ちを知ることにより、恵みや文化などの魅力を再発見し、地域の誇りを育む教育、未来へつなげる保全、正しく知り身を守るための防災へ活かす道を、お菓子を通じて共有している。
ジオガシ旅行団
https://geogashi.com/

この記事をシェアする